川崎市病院事業管理者 就任挨拶
令和3年9月1日に、川崎市病院事業管理者を福田紀彦市長より拝命いたしました金井歳雄と申します。増田純一前管理者の健康上による急な退任を受けて就任することになりましたが、私は市立川崎病院の病院長を約2年半務めておりましたので、比較的シームレスに業務を引き継いでいけるのではないかと考えております。難しい時代の中、前管理者が切り開いてきた地平をさらに発展させていけるように取り組んでまいります。
公立病院は長年の赤字体質に対して、ここ10数年、公立病院改革ガイドラインを基軸とした経営改革が強く求められ、また、超高齢化社会への対応として、地域医療構想による地域完結型医療への転換(病院の機能分担、病床数の整理、連携強化)が進められています。さらに、最近では令和元年、医師の働き方改革が強く打ち出され、労働時間の削減が求められる中、令和2年、新型コロナ感染症の世界パンデミックに日本中が席巻され、医療職はさらに過酷な現場で働かされるという、まさに逆行する事態になってきています。一方で、病院の収益については、新型コロナによる稼働額の減少は軒並み、10%を超える大打撃となっており、経営改革はどこぞに追いやられている状態です。
このような混乱と混迷の中、公立病院事業を運営していくのは、誠に難しいものがあると認識しています。しかし、我々、川崎市3病院(川崎、井田、多摩)は、この一年半の間、新型コロナ感染症対応を正面から取り組み、まさに公立病院の使命を率先して、最前線で果たしてきたと言えるでしょう。当初、心配されていた経営の悪化は補助金などで解消される見込みですが、問題は大きく落ち込んだ一般診療実践を、医療職の士気とともにどの様に取り戻していくかでしょう。
生き馬の目を抜く様な厳しい医療業界の中で、公立病院は今回のことで、その存在意義を大きくアピールしたものと思います。このコロナの負荷の中で、これをチャンスと捉え、診療報酬の算定にあたって基準のクリアが難しかった新たな加算を取得した川崎病院の例もあります。井田病院は、地域医療構想の中での役割の再検証が国から求められましたが、災害対応やコロナ対応で存在価値を示し、再検証は既に昔話になっています。多摩病院は聖マリアンナ医大との連携を背景に揺るぎなく大きな貢献をしました。病院が、社会の中でその行政判断や環境に大きく影響されるのはやむを得ないことですが、その周辺環境をより良いものにすることもできます。積極的なワクチン接種は最たるもので、公立病院として大きな貢献ができたものと考えております。
川崎市の病院事業は、人口が154万人を超えた政令指定都市川崎市の市民の健康と暮らしを守る巨大なセーフティネットです。この先の医療現場の荒天の中でも、私は、管轄下の3病院が存在意義を果たしていける様に、病院とともに尽力してまいります。
何卒よろしくお願いいたします。
令和3年(2021年)9月
川崎市病院事業管理者
金井 歳雄